吉岡力先生「世界史の研究」

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ということで、ひさかた振りの懐かしの参考書シリーズ兼立派な教官シリーズ。
古本屋でみつけて、あまりにも懐かしくてかってしまいました。今回手に入れたのは、1967年版。私が使っていたのは、多分1980年代末のものですが、吉岡先生の世界史というと、世界史の学参では一番評価が高かったものです。
まー、細かい事実を網羅的に拾っているだけでなく、この本には、ちゃんとした史観というか流れがあったような気がします。
それがわかるのが、以下のはしがき。

「世界の歴史は、わずか5世紀前までの各文明圏単位の歴史から、19世紀末以後文字通りの一体化した「世界史」に発展し、さらに今後、宇宙スケールの世界史に拡大しようとしているのである。歴史の歯車は、こうして個々の人間の悲しみや喜びをこえて、その動きを1こまずつ進めるのである。まことに歴史は常に動いてやまない」

いきなり「宇宙スケールの世界史」ですがな。視点の高さを感じざるを得ません。
先生もお書きになっていますが、この本は学参でありながら、最新の研究成果を余すところなく投入し、大学教養レベルの書物になっているそうです。

吉岡先生は1908年に生まれ1975年にお亡くなりになられました。戦前は旧制の浦和高校の先生だったのですが、戦後、駒場西洋史の教官をされていたそうです。

先生は、歴史教育について大変な努力をされ、歴史教育研究所を設立され、所長をされていたそうです。研究所といっても、先生の私財を投入され、場所は先生のご自宅で駒場の裏のいまでいうセブンイレブンの近所だったそうです。


翻って、今の本屋の学参の棚をみれば、「これだけでわかる世界史」とか「ごろあわせ世界史」みたいな本が跋扈しています。悲しいことです。思えば、こうった硬質な本で勉強できた私たちの高校時代はよい時代だったのだと思います。