北杜夫「夜と霧の隅で」

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ひさびさの純文学ネタ。

北杜夫さんは先月お亡くなりになってしまいました・・・・。
新聞やら、テレビでは、北さんの代表作としてどくとるまんぼうシリーズを紹介し、どちらかというとユーモア小説作家としての紹介記事が多かったような気がします・・・・。
しかし、わたしが、若かりし頃読んで衝撃を受けたのがこの本。

ナチスドイツのもとで、精神病患者さんの多くが、闇のなかで命を奪われたわけです。
そのなかでの精神科医の苦悩が描かれている小説です。なかには、「戦争に役にたたないから」という理由で、ナチスの処置になっとくしようとする医者もいたわけです・・・・。なかには、なんとか助けようとした医者もいたわけです。

まー、いろいろ読み方はあるかもしれませんが、戦争遂行上、患者さんは役に立たないかもしれないが、人間は人間として価値があるのではないか、命は命だから価値があるのではないかということを問うている小説ではないかと当時は思いました(まったくの誤読かもしれませんが・・・・)
北杜夫さんを紹介するのであれば、この作品をちゃんと紹介してほしかった(この小説で北さんは芥川賞をとった)と思うミラーでありました。

北さんのお父君は斎藤茂吉でありました。茂吉の歌集に赤光というのがありますが、これは、仏説阿弥陀経からとったことばがあります。だから斎藤家のご宗旨は浄土宗さんなのでしょうか。衷心より哀悼の誠を捧げ、浄土での再会を待ち望む次第でございます