「逐条解説検察庁法」伊藤栄樹著

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といふことで、最近、検察が話題になることが多いようです。

やはり、法学徒としては、検察庁のよってたつ基盤となる組織法をしらずんばあらざるものなりと思い、買った本であります。

伊藤氏という方は、だいぶんまえに検事総長を務められたかたで、このほんは、法総研の「研修」に連載していたものをまとめたもののようです。

まー、検察庁法というと、最初には、検事たるもの法律と正義にのっとって業務を遂行するとかそういうちょっこし崇高なことが書いているかと思えば、


「第一条 検察庁は、検察官の行う事務を統括するところとする。」
となんだか事務的な規定から入っています・・・・・・。

で、やっぱり政治と検察の緊張を集約的に表現している14条、すなわち指揮権発動に関する規定です。
まー、以下の伊藤氏の文章を読んでみると壮絶さを感じます・・・。
検事総長は、検察権を代表する者として、法務大臣の指揮に対し、それが違法でない限り盲従するという態度をとることが許されないことは、いうまでもない」

「終局的に相互の意見の対立をみた場合においては、検事総長のとるべき態度として、
(1)不服ながらも法務大臣の指揮に従うか
(2)指揮に従わず、自らこれに反する取扱をし、または、部下検察官に対して法務大臣の指揮に反する指揮をするか、
(3)官職を辞するか

官職を辞することまで視野にいれているわけです。
この本を読むと、伊藤氏はもし、そういうことがあったら(2)や(3)の対応をとり、長期的に検察の正義を貫こうとしていたことが慮れるわけです・・・・。

だいたい、いくらなんでも上司の言うことに盲従してはいかんということを公言できるというのは、すばらしいことです。よほど、法律と正義によってたつことに誇りをいだいていたと思うのです・・・・。

最高検の人にも大阪高検の人にも、那覇地検の人にもあらためて心して再読してほしい一冊です。