「出版人の生き方70講」

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著者の田口さんは民事法研究会という出版社の代表。登記とか執行とか消費者問題の本を出している良い版元さんです。
実は、もともと信濃町の会社から独立されたかたでその意味ではわたくしの大先輩にあたる方でもあります(私が入社したころにはすでに独立されていて直接仕事の指導をいただく機会はなかった・・・)

この本は、民事法研究会の社員に対して講話をしたのをまとめた本のようです。こういった生き方本って結構難しいのです。その人の人生観が露骨に反映されてしまいます。まー、卑俗かつ矮小な人生観をもった人が生き方みたいな本を書けば卑猥な本ができあげることになります。紙とインクの無駄みたいな本が量産されます。

この本は、その対極にあるような良い本です。

田口さんの深い学識とともに(それだけだとやたらに衒学的な本になってしまうがそうなっていない)深い職業人生に対する見識がうかがえる本です。

田口さんは執行官の話から敷衍して編集者の仕事について説明されています。「執筆者に書いてみたいという気持を起こさせるためには、編集者自身が全人格をかけて執筆者に交渉・説得する必要があります」ということを述べられています。

なんか、メールでやりとりして読んだこともない判決文の評釈を頼んで、よくわからぬまま雑誌に載せるみたいな事件にこの前接したので、よけいに心に沁みる文章であります。
仕事とは、なににせよ、全人格をかけて行うものでありたいと思うミラーであります。