「語られなかった敗者の国鉄改革」

イメージ 1

たまたま、アマゾンで発見した本。
いままで国鉄の分割民営化に関する本というと、JRの経
営陣が書いた「分割民営化すばらしい」という本か、民営
化に反対している組合関係の人の書いた「分割民営化ナン
センス」という本しかなかったような気がします。
この本は、分割民営化が議論になっているときに国労企画
部長という要職にあった秋山さんという方の書いたほんで
す。
世が世なら、総評の事務局長とか、社会党の国会議員とかに
なったような大立者なわけです。

秋山さんは、当時は、国労のなかでも主流派的な立場にあ
ったわけですが、結局は、1986年のいわゆる修善寺
会で、分割民営化断固反対を掲げる左派にやぶれ、国労
脱退。鉄産労連を経て、JR連合へといたるのであります
・・・。

まー、いまでいうと国労というのはかなり衰微してしまっ
ているのですが、当時は、国労というと日本でも最強の組
合の一つだったのです。

それが、なぜ分割民営化で敗北してしまったのかというこ
とを昔から疑問に思っていたのです。
ストでもなんでもがんがんやったらええやんけ。と当時、
中学生だった私は思っていました。
当時新聞をよんでも、ストをちゃんと闘っている組合は、
千葉動労くらいしかなく(全動労とかもやっていたようです
が、田舎の新聞には登場しなかった)、当時は、ストライキ
も、国電同時ゲリラも、自民党本部放火もいっしょくたに
して、断固支持だと思っていた過激思想の中学生だったわ
けです。
その中学生からすると、国労は、大組織なのにたたかわな
い組織なのだと思っていたのです。

この本を読んで国労衰退の原因としてなんとくなくわかっ
たことが2つ。
1つは、いうまでもなく、派閥の対立なのです。
この秋山さんという方はいわゆる太田派なのですが、左派
的な向坂派とか共産党系とか、右のほうは、社会党の右派
的な部分までいろんな派閥があって全然まとまらないわけ
です。決定的な局面で全然まとまらないから、思い切った
行動がとれないわけです。
それがよいことか悪いことかは別にして、動労などは、あ
る程度鶴の一声で統制がとれていたから、民営化を乗り切
れたわけです。
まー。ある程度内部対立は必要なのですが、それがいきす
ぎては自滅するという一つの見本なのです。

2つは、これまたいうまでもなく、社会からの断絶、いわ
ゆる国鉄一家主義だったのではないでしょうか。
わたしの知り合いのなかには、いろいろ小さな労働組合
争議団として頑張っていたかたが多くいるのです。
そういう方がみんないうのは、「国労というのは、かなり
官僚的で、小さな組合の要請なんかなかなか聞かんかった
」という声があるのです。別に国労だけではないのですが
国鉄当局との力関係に対しては敏感ですが、他の組合と
連帯を求めるという姿勢は薄かったような気がします。
それが結局は、分割民営化反対の声が広く広まらなかった
原因ではないでしょうか。

思えば、20年以上たったのですが、
郵政ではほぼおんなじことが進展しているのです。
分割民営化とはなんだったのかを振り返って考える際にか
ならず、資する本だと思うしだいです。