小林直樹先生「憲法第9条」

ついに、買ってしまったこの本。
昔、学生時代に読んだ記憶がありますが・・・・。

小林先生はいうまでもなく、東大の憲法の先生だった人。
最初は、法哲学が専攻だったらしく、例の「ノモス主権論」の尾高先生の弟子にあたる人だったらしいです。助教授時代の著作「法理学(上)」は、たぶん法哲学を勉強したことのある人なら、読んだことがある、すくなくとも読もうと思ったことがあるはずです。

まー、いろいろあって憲法の教授になられたわけですが、同時代にいたあるA教授(たしか2、3歳の差)に比べて若干日陰感があったという印象をかってにわたしはもっております。
いろいろ理由はあるのかもしれませんが、小林先生というのは、結構、野党的な考えの人だったようです。ちなみに、いまとなっては不思議なことですが、この小林先生は現T大総長の師匠にあたる人です(本人から聞いたので確かだと思います)。現T大総長もいまでは、「情報法政策」という専門でなんか、マスコミや旧郵政省と結託しているんじゃないかみたいなみたいな目で一部からはみられていますが、その昔は(いまでもだとはおもいますが・・・)、プレスの自由を民主政の根本から基礎づけるみたいな研究をやっていた憲法学者としても、活躍されていたのです。小林先生の影響もいろいろあったと思います。

それはさておき、この本は、失礼をかえりみず、ごくおおざっぱにいうと「自衛隊違憲だけど合法」ということを書かれているわけです。
昔懐かしい岩波新書の黄色版。出版されたのは、1982年。まだ東西冷戦下の話です。
まー。79年のソ連のアフガン侵攻とかで、結構燃え盛っている時代です。
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この本では、そういう時代において自衛隊についていちおう「違憲」ということをいっているのは、左翼的なんですが、合法的存在として認めるということをいっているわけです。

社会党という政党がむかしはあって、基本的には「違憲合法論」をある時期からとっていたわけです。
私は学生時代には、社共既成平和運動を乗り越えるというたちばだったので、「違憲合法論ナンセンス」「自衛隊粉砕」みたいな考え方だったわけです(いま考えるとどうやって粉砕するつもりだったんでしょうか・・・・)。

そんころは、この本を読んで「とんでもねー、日和見的な理屈だ」と思っていたのですが、あらためて、読むと、先生の憲法の精神を尊重しつつ、現実に存在している自衛隊を存在としては、認めざるを得ない。そういった苦悩が行間から読み取れたような気がしました。

20年前は最後のほうなんて、読まんかったけど、あらためて最後まで読んでみました。

「平和主義の道を切り拓こうとする多数の国民がいれば、それ(筆者注=自衛隊の根本的な改編)は達成しうる現実の目標である。何よりも日本の国民が、こうした目標を追求しつづけることこそが、転落や破滅への道から脱出する唯一の希望の手がかりなのである」(同書218頁)。

これを理想論とかたづけることは簡単なのかもしれないが、そこまでまじめに憲法を研究して、未来を提示しようとした学者がなんにんいることか。

護憲論者も改憲論者も、右翼も左翼も、みんなあらためて読んでほしい本です。