最高裁回想録 藤田宙靖先生

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こんばんわ。
ひさびさの尊敬すべき法律学者シリーズ。
行政法の藤田先生です。藤田先生というかたは、ずっと東北大で教えられていたので、私は直接習う機会はありませんでしたが、立派な先生だと聞いていました。
最近まで最高裁判所裁判官を努めておられました。この本はその回想録。

まー、こういった回想録というのは当たり障りのないことを書こうという人が多いようですが、この本はそうでないようです。読む人が読めば、ほかの判事や学者に対して批判していると解釈できる部分があるような気がします。先生は、決して他人を攻撃しようというのではなくて、学者出身の判事として最高裁判例がどう形成されているのかをオープンにするのが、自分の使命だという崇高な考えに基づいているようです。

いちばん、驚いたのは、国会の定数是正について「最高裁は近時、参議院にせよ衆議院にせよ、現行の定数配分が投票権の不平等をもたらしていることを十分に意識し、国会がこれを早急に是正する必要があるとのメッセージを発し続けている。それにも拘らず問題の根本を理解し、然るべき行動を取らない国会の不作為に対して、いわば我慢に我慢を重ねている。Xデーが来るのは、恐らくは、選挙を無効としたときにもたらされる理論的実際的混乱につき、もはや最高裁は一切の責任を負うことができず、一重に立法府が責任を負うべきである、との判断に多数の裁判官が達したときであろう。そしてその日は、国会の現状がこのまま続く限り、さほど先のことではないかもしれない。」とお書きになっておいます。寡聞にして最高裁裁判官OBがここまではっきり書いているのを見たことがありません。まー、考えかたとしては100%納得できます。
しかして、国会議員の先生方はそこまで定数是正について切迫感を感じているようには見えません。
この本は是非、国会議員の先生方に読んで欲しいものです。