「親鸞」石井恭二著

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著者の石井さんは、道元正法眼蔵の現代語訳もされている方。その正法眼蔵の訳のほうは、どうも現象学とか、そっちの観点から訳されているようで、あんまりついていけなかったけど、この本は、私にとってもよく理解できる本。著者は、道元親鸞を正反対にとらえているそうです。「いっぽうは禅院で一筋に弟子を鍛え清潔を旨とする修道者で香木の高い薫りがする。いっぽうは「親鸞は弟子ひとりも持たず候」と、師弟という関係を撥無否定し、複数の女性と多くの子を成し食肉して肥溜めの臭いを苦にしない」という表現がこの本に出てきますがすごく納得できる表現です。肥溜のほうに近いミラーが、いままでどんだけ本を読んでも道元さんの考えが理解できなかった理由がこれではっきりしました。


この石井さんというかたは、現代思潮社創立者現代思潮社というと、トロツキーの著作集を出したり、例の「悪徳の栄え」裁判を闘ったり大変立派な出版社であります。そういえば、某K・K氏の初期の本も何冊か現代思潮社さんからでています。新左翼にとっては欠かせぬ出版社でありました。

石井さんがこういった仏教関係の本を書くようになったのは、ある程度現代思潮社の仕事から離れた時代のようで、この本を含め石井さんの仏教関係の本は河出書房さんから出ているようです。

出版人としても思想家としても大変尊敬すべき人でありましたが、残念ながら、先月83歳でお亡くなりになってしまいました。

偉大な先達の逝去に際し、つつしんで哀悼の意を表するものであります。