ということで、事業仕分け

いろいろな人から「事業仕分けについてどう思うか」と聞かれるのである。

まー、あんまり具体的にどういうことをやっているか認識がないので、「そのうち結果がわかるでしょう」みたいなことをいっているのである。
まー、しかし、そもそも事業仕分けという手法を地方自治体に導入していったのは、「構想日本」というシンクタンク加藤秀樹氏である。残念ながらあたくしの高校大学の先輩である人なのである。旧大蔵省のOBの人である。いい意味でも悪い意味でも通常の人ではない。

どうかんがえても、表面上のきれいごとと違ってなにか政治的な意図をもってそれがやられているとしかいいようがない。

いいたいことはいろいろあるが困るのは大学の研究である。
蓮某なる議員が「スーパーコンピュータの開発で世界一になる必要はあるのか」ということばに象徴されている通り、学術研究にも容赦ないメスが入っているのである。

まだ理系、とくに、工学部や医学部はよい。
こまるのは、理系でも基礎研究や文系でも哲学や史学であろう。

だいたい、蓮某から「なんで、国立大学でサンスクリット語をやる必要があるのか、国民にどういうメリットがあるのか」といわれても、どうかんがえても印度文学科の教授でも答えられないのではないか。

コンピュータの開発のように、短期に(すくなくとも印度の悠久の歴史よりは)、計量化できるものとちがって、文系はメリットを説明しずらい・・・。


昔から、こういうことは、あった。以下に、国会の議事録を示すが、1980年代半ばに国立大学の附置研究所を学術審議会というところで査定をしたようなのである。まー、少人数であんまり専門知識のない人が査定したようである。

そのなかでも最低ランクをとったのが、以下の議事録にある通り、われらが東京大学新聞研究所である。わたくしもその後身たる社会情報研究所の研究生をしていたので、調査された当事者の話も聞いたことがある。

建物が同じでとなりにあった社会科学研究所も最低ランクだったのである。

でも、権力から最低ランクと評価されるのは仕方がないのである。

だいたい、社会科学というのは、既存の秩序を批判的に研究するから価値があるのある。

その意味であたくしが一番尊敬する社会科学者はやっぱり政治学南原繁先生なのである。吉田内閣の片面講和論を批判して、吉田茂総理から曲学阿世の徒とまでいわれたのである。

まー、昔の新聞研も社研もどうかんがえても政府の批判をしていた人が多いのである。だから、最低ランクの評価は名誉である。

でも、民主党事業仕分けで大学の研究所を評価したら短期的な視点でつぶされるところも出てくるはずである。それでは、長期的に考えると、健全な民主政は維持できないはずである。学問というのは、時の権力に阿ってはいかんものではないか・・・。

まー、あほな大学のあほな政治学の教授とかが大学の予算を増やすために民主党を支持するような意見をいいだすようなことがないかどうか心配である。

※※※※※※※※以下引用※※※※※※※※
衆議院文教委員会昭和62年5月26日の議事録
○山原委員 五名のわずかな委員によって、七十一の
長い歴史を持つ附置研究所の内容を評価すること自体
が私は無謀なやり方だと思うのですよ。その内容自体
を見ましても、研究所設立の意図、趣旨から見て現在
も妥当であるか。妥当と言いが
たい場合、別研究の目的を持っているか。それは妥当
か。あるいは研究所の現状から見て設置形態は妥当か
。また研究所の流動性はどうか。人事は交流が適切に
行われているか。所外との交流は適切に行われている
か。また研究所の規模、組織、運営は妥当か。こうい
うものなんですね。
 それで、コメントがつけられておりますが、それを
見ますと、例えば東京大学の社会科学研究所につきま
しては、「日本の社会科学研究の縮図の観。研究部門
の構成が全く無体系で、講座の総花的集合と化してい
る。国際交流の実績に乏しい。研究所としてのアクテ
ィビティは低い。」こういうふうに書かれております
。これは五段階で最悪ですね、A1となっております
。それからもう一つA1、これは東京大学の新聞研究
所ですが、どういうふうなコメントがついているかと
いいますと、「大学の附置研究所としては存在理由な
く、現状の研究組織程度ならば、文学部に合併吸収す
るのがもっとも自然で有効な方向であろう。」という
ふうな評価がなされているわけでございますけれども
、行政機関の一つとしてこういう評価をし、しかもい
わば勝手に改組等を押しつけることは、まことに大き
な問題だと思うのでございます。これはまさに研究内
容への評価であり、行政機関がやるのはまさに国家統
制につながるのではないかと思うのですけれども、こ
ういうことは全く正しいやり方ではないと私は思いま
す。
 そして、今おっしゃいました五名の委員、それから
さらに四名の専門委員あるいは担当科学官三名、これ
を全部合わせましても、例えば文科系の方は梅樟忠夫
さんお一人なんですね。あとの方は全部理科系といい
ましょうか、そういう自然科学系の人たちなんでしょ
う。たった一人の人が文科系、社会科学系で、それで
五段階評価をするというやり方が果たして正しいのか
。文部省としてまさか正しいとは思っておらないと私
は思いますが、この点はどうでしょうか。
※※※※※※※※引用終り※※※※※※※※