中大事件に思う。

ということでへろへろと生活しているミラーです。
ちなみに定額給付金はまだのようです。

先日、1月にあった中央大学理工学部における殺人事件の容疑者が逮捕されたとのニュースがありました。
まー、早期に解明をしてほしいものです。いまの容疑者については、報道されているところによると、元教え子でなぜか先生を逆恨みし、犯行にお及んだということのようです。
これらの報道がほんとだとすると、わたくしも元大学教員としてはひとごとではないわけです。

常連の読者様のように、人格者でかつ、学生の苦情に対しても誠実に対応されている人であれば別段、そういった人は大学教員にはすくないような気がします(むろん私も非人格者グループに属することはいうまでもありません)。

まー、現実に学生さんと接していると日々さまざまなクレームがあるわけです。
なかには、「マイクの声が小さい」とか「教室の換気が悪い」など、大学に責任がありなおかつ現実的に対応可能なもののありますが、なかには因縁とかわがままとしか思えないものがあります。

「テストが難しすぎる」とか「好きな講師の授業をとらせろ」とか「欠席した授業の時に配布されたレジメをちゃんと配れ」とかいうものです。
なんか、小学生より手間がかかるという気がすることもあります。

まー、どうやら、高窪教授は、容疑者の元学生に対してちゃんと卒論の指導をしていたようです(その証拠にちゃんと容疑者は卒業できているのです)。私の推測では、その指導の過程で、いろいろ厳しいことをいったり、就職に関する相談でいろいろ現実的な話をしたのだと思います。
それは立派な教育活動だと思うのです。

 たとえば、私も経験がありますが、Aという教授に就職の相談において「○○っていう会社はどんな会社ですか」と学生から聞かれて「○○とかいう製品がメインで、利益も○○でいい会社だ」という答えをしたとします。そのあとになって、○○という会社にその学生が入社して、「まー、なんか自分とはあわない会社だ、Aという教授はうそをついた。悪い会社ではないか」
と言われても、それは、難癖というものです。

まー、大学というのは、届け出をすれば、無料職業紹介事業をやることができ、だいたいその届出をどこの大学もしているようです。
だいたいは、キャリアセンターとか就職部とかがその業務を統括しているようです。

だから、嘘をいって紹介したり、人身売買的なことをやったりすると処罰され、損害賠償請求されるのは当然ですが、結果的にあわなかったというのは当然就職した本人の責任なのです。

まー。こっからが本質論に入ってくるのですが、
就職に関するカウンセラーとか相談員とかコンサルタントとか、いろいろ名前は別にして、ひとくくりにすると「援助者」ということになります。
援助者というのは、援助をするだけですから、決定するのは自分なわけです。助言をもらうだけなのです。

これに対して、エージェントとか代理人というのは一任をされているわけです。まー、こういった形態で仕事を探すというのは、プロ野球選手とか特殊な人たちです。当然高いフィーを払っているわけです。当然、代理人の責任は大きいわけです。

どうもこのへんの役割がはっきりしないとトラブルになるようです。
ひょっとしたらこの容疑者も、たんなるアドバイスをもらっただけなのに、「判断を教授に任せた」と思っていたのかもしれません。

一番心配なのは、大学の世界で「学生の相談にあまりのると、後で、逆恨みされるから、なるべく相談にのらないようにしよう」という風潮が蔓延することです。

まー、昔、キャリアコンサルタントの講座でならいましたが、「私はアドバイスするだけで、決定するのはあなた自身」ということをちゃんと繰り返すしかないのでしょう。
あとは、この容疑者の場合、心の病とまではいきませんが、相当にマイナス思考の強い人だと思います。
まー、そのへんをちゃんと相談を受けた教員がこころの専門家にリファーできるような体制があれば防げた事件なのかもしれないと思うのです。

こういった話をすると、「大学っていうのはそこまで面倒をみんとあかんのか」といわれるわけですが、そうなんです。
だいたい、逆恨みするようなマイナス思考の学生でも入学したんですからちゃんと指導せんといかんのです。

この容疑者ももし友達でもいれば、ちょっとは変わっただろうにな、と思うです。
わたしもどちらかといえば、というかかなり、人づきあいの悪いほうですが、まー、同好の士がいてくれたおかげで、ちゃんと社会に適応できるだけの社会性を大学時代に身につけることができたのです。

まー、どっかの大学では、学生相談所が、「昼食も毎日一人で食べるなど友達がいない人向けのセミナー」みたいなことをやったというようなことを聞いたことがあります。さらに取組が必要だと思います。

課題は2つ。
ひとつは、学生相談所の体制の充実なのです。
だいたい、わたしも保健センターにはよくお世話になりましたが、学生相談所というのは、在学中一回もいったことがありません。
人員や予算にも恵まれていないようです。まー、大学っていっぱいまだむだな部分があると思います。まったく研究も講義もしない教授とか。
そういった部分を削ってでもちゃんと充実させてほしいものです。
ふたつめは、各部局の連絡体制なわけです。
今回の事件でも、容疑者は問題があるということがはっきりしていたわけですから、もっと早い段階で保健センターとか他の部局に連絡していればまた違った対応になったんでしょうが・・・。
やはり、大学というのは縦割り行政なわけです。一般的な大学だと、教員、就職部、学生部(だいたい、その傘下に相談所みたいなのがある)、保健センターとおまけに各学部でも、学生課とか当然いろいろ機構があるわけです。まー、少なくとも困難な問題を抱えている学生については、ちゃんと情報を共有するとかの仕組みづくりが必要でしょう。

こういった救いようのない事件でもいまの大学の改善のきっかけにしたいものです。