いわゆる士商法。

先日テレビを見ていると、「講座をとって資格を取ると職業を紹介する」という宣伝をとっていた悪徳、通信教育屋さんが、業務停止命令の処分をされていたわけである。
あやしげな勝手に作った資格を国家資格だといつわり多額の受講料をとるという士商法というのがあるが、それに職業紹介をプラスしたわけである。

今後不景気になるとこういった悪徳商法がどんどん増える。
もし自分が極悪人だったら、つぶれそうな派遣会社の社員に金を渡し籠絡する。
そこから、派遣社員の名簿を横流ししてもらう。
名簿を活用して○○という資格をとると正社員として就職を紹介するという電話かDMをする

という形でぼろもうけができるような気がする。

このご時世、派遣会社も潰れるところが出てくるだろうから、そこからの名簿の持ち出しが心配。

はっきりいってその資格をとると絶対就職できる資格なんて世の中にほとんどないのである。
弁護士になったって就職できない人がいる時代である。

しいていえば、医師くらいだろうと思う。
昔、ある社労士の講座をやっている予備校(当然私の勤務先ではない)が、「社労士というのは大変安定した仕事で・・・」という宣伝をやっていたことがある。すくなくとも当時は、社労士というのは単なる高卒では、受験資格がなかった時代である(たぶん今もそう)。そのある予備校では、「高卒の方は、まず、社労士の受験資格をえるために行政書士を受けましょう。行政書士の講座プラス社労士の講座を申し込みましょう」と薦めていた(薦められた複数の人間から聞いたので事実であろう)。
いまや行政書士の試験も超難関になっているので、その人は、社労士合格までに、5年も10年もかかるであろう。しかも、いまの社労士の仕事というのは一般的には安定からほど遠い。よっぽどサラリーマンのほうが安定している。

資格試験の予備校の世界で大きく欠落しているものがある。金融の世界でいう「適合性の原則」というものである。たとえば、みなさんの中で、株式投資も、FX取引も、商品先物もやったことがありません。投資信託もかったことがありません。いままでの人生で、金融商品というと、普通預金ぐらいです。その残高も10万円くらいです。
という人がいたとする。その人が、ハイリスクハイリターンの、たとえば、CFD取引を始めようと、証券会社に申し込むと、ほぼ、「お取引できません」といわれるはずである。
素人がやけどするのが目に見えているからである。法律的にもそうなっている。

全然いままで、資格の勉強もしたことがありません。大学入試もやったことがありません。法律にまつわる仕事もしたことがありません。という人がたとえば、司法書士の講座を申し込んできたら、どうするか。たいがいの予備校は、「いやー、がんばって資格をとりましょう」といって、受講料をもらう。当然、大学の法学部の学生が脱落するよりも大きい確率で脱落する。それは予見可能だ。でも、金をもらうときには、おくびにも出さない。それが健全な商売なのか。

「いやー。いきなり司法書士は難しいから、まず法学検定3級を受けてみて、できそうだったら、司法書士をやってみてはどうでしょうか」というのが人の道というものではないか。

業界としては、司法書士とか、会計士とか大きな資格のほうがもうかるのはわかる。しかし、それでは、すそのが広がらない。

証券の世界でいうと、野村はずっとこつこつと小口投資家をあつめていたのである。山一は法人の山一といわれた。どっちが最終的に勝ったか。

それこそ簿記3級とか、法学検定とか、小口的な資格に注力することが、資格業界にも求められていると思うのは私だけであろうか。