昨日の続き「総長」とは

ということで、昨日のつづき。ある人から聞かれたのだが、「総長と学長はどう違うのか」。本日の新聞を見ると、多くの新聞は「T大学次期学長に濱田氏決定」みたいな記事であった。ひとり朝日新聞様のみが「次期東大総長に濱田教授・・・」と「総長」という肩書を用いているのである。
人によっては、総長というのと学長というのがあって違うのか、という誤解があるかもしれないのである。
T大学以外大学については、よく知らないのでT大学についてのみいえば、以下のようなことであるらしい。
そもそも新制大学になる前、すなわち、戦前と戦後すぐは、総長が正式名称であったのである。戦後は、学校教育法では、「学長」になったのである。だから、戦後(新制大学になってから)のT大学の長は学長なのだが、戦前からの慣例として、総長とよんでいたらしい。だから、新聞社は、正式名称である「学長」と報道していたのである。別に法律的に正確を期すということよりは、総長というのがなんだか事大主義的であり、ことに戦前の総長には、れっきとした軍人が就任していたこともあって、戦後民主主義的な流れのなかで、学長という新しい言葉を新聞社が好んでつかったのだと私は推測しているのだる。朝日新聞も昔は全部「学長」ということばで、通していたはずである。
事情が変わったのは、法人化である。2004年4月1日に国立大学も法人化したときに、東京大学では、基本組織規則をというのを作っている。そこで、はっきりと東京大学の長は総長だとうたったのである。
しかし、別に学校教育法やそれを受けた国立大学法人法はそのまま学長という文言である。
だから、別にどっちでもいいといえばどっちでもいいのである。
でも、わざわざ、T大学が、「総長」とリリースしているのを、学長にいちいち変換するというのもおかしな話である。
賢い読者は気づいたかもしれないが、会社法に「会社を代表するのは社長だ」という規定はないのである。社長というのは各会社が定める内部的な名称なのである。登記簿をみてもでてこない。
総長も同じことである。総長を学長となおすのであれば、社長というリリースがあったら、代表取締役(別に社長といっても代表権がない人もいるかもしれないので、調査が必要だろうが)と全部、会社法できまった用語になおすのだろうか。
慣例で総長ではなくて学長と表記すると新聞社のきまりできまっているのであれば、T大学も慣例で総長ということに決まっていることを尊重してもよいのではないか。
読売新聞だって、早稲田の総長は総長と表記しているのである。早稲田の総長だって、学校教育法上は「学長」にあたるだろうに。ではなぜ、T大学だけ学長とわざわざ変換するのか。朝日新聞以外はそこまで考えて記事を書いていないのではないだろうか・・・。

参照条文。

学校教育法
第九十二条
 大学には学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。
(以下略)

東京大学基本組織規則
(役員)
第4条 大学法人に、法人法の定めるところにより、役員として、その長である総長、7名以内の理事及び2名の監事を置く。
(総長)
第5条 総長は、大学法人を代表し、その業務を総理するとともに、学校教育法の定めるところにより、大学法人が設置する東京大学の長として、その校務をつかさどり、所属職員を統督する。