「更生」と「更正」

新聞に誤字があると読むにたえないという話である。

問題なのは、「FUJI Sankei Business i」(フジサンケイ・ビジネス・アイ)9月18日二面である。いうまでもなく、このフジサンケイ・ビジネス・アイ(長いので単にビジネスアイという)というのは、フジサンケイグループの発行する経済専門紙である。昔は、日本工業新聞といっていたものをリニューアルしたものである。その昔、森喜朗元首相がご勤務されていたことでも知られる。名門中の名門である。

問題の記事は、解説記事でリーマン・ブラザーズの破たんのせつめい。「更生」とすべきところが「更正」となってしまっている。しかも何箇所か。
実は、この二つよく間違う。覚えやすいのが、「更正」のほうで、実はこれは法律用語。手元に六法がない人も閲覧しているかもしれないから、最後に掲げた参照条文を見てほしい。登記と訴訟と税務の世界で使う用語で、なんか、間違った書類への記載を訂正することといった意味なのである。民事訴訟法の257条というのが一番わかりやすく、計算違いなどが例として挙げられている。

「更生」のほうは、もとは法律用語なのかもしれないが、一般的に使われる用語。あらたに生まれ変わるという意味である。
だから、会社更生というのは、いったん、破たんした会社が債務をきれいに整理して新たな会社として生まれ変わるということである。たとえば、やくざ屋さんが、刑務所に入って、反省し、出所してまっとうな道にもどるというのも「更生」なのである。いままでの人生を悔いあらためて生まれ変わるという意味である。

問題なのは、大新聞であるにも関わらず、修正がなく、通過してしまい読者に流れる点である。
記者はたぶん経済専門の記者で六法全書なんかほとんどみたことがない人なのだろう。上記のような定義は辞書にも書いてある。整理部の人がいれば辞書ぐらい引いて確認すべきである。

記事だけかと思っておれば、このような恥ずかしい文章が臆面もなく、ホームページに出されているので、みんな鑑賞してほしい。http://www.business-i.jp/news/for-page/naruhodo/200809180005o.nwc しかも署名いり。

このような間違い多くてある日本を代表する証券会社でも、誤記がある。問題は誤記が起こることではなく、法律に詳しい人がいっぱいいる野村でだれもホームページをみて、修正しようとしないということである。
http://www.nomura.co.jp/terms/japan/ka/kaishakousei.html

資格試験では、当然正しい字を書かなくてはならない。他山の石としたいところである。


■参照条文

不動産登記法
(定義)
第二条
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 ~十五 略
十六 更正の登記 登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記をいう。
以下略

民事訴訟
(更正決定)
第二百五十七条
 判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
2 更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。

国税通則法
(更正)
第二十四条
 税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。