あー、裁判員制度

ということで、裁判員制度というのがなんだか話題です。テレビでも毎日のように関連した番組が放送されています。
とりあえず、そのものの是非はおいといて、先日あらためて読んだ本の話。

読んだきっかけは、上田誠吉先生という有名な弁護士の先生が5月10日になくなられたからなのです。
上田先生というかたは、まー、いろいろな冤罪事件の被害者の弁護人として活躍された立派な先生なのであります。
それをきっかけに「誤った裁判 八つの刑事事件」という先生が後藤弁護士という仲間の先生と書いた本を20年ぶりぐらいに読み返したのです。

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20年近く前、この本を読んで高校生だった私が一番関心をもったのは、菅生事件という事件でありました。
菅生事件というのは、共産党シンパに身をやつした警察官を使って、共産党員を罠にかけ、駐在所爆破の罪を着せ、罪もない共産党員を逮捕したというとんでもない事件です。
そのおとりの警察官を警察はかくまい続けたのですが、結局発覚。当然のことながら逮捕された人は無罪に。
おとりになった警察官は、爆発物取締り罰則違反で起訴されたが、、上司の命令でダイナマイト運んだので、これを拒否することを期待できる条件にはなかったと無罪になってしまったのです。なんか変な事件です。
当時はこの事件の記憶が鮮明だったのです。当時左180度に突っ走っていたミラーは、「どうせ、左翼になったからには、なにもしなくても、罪を着せられて逮捕されるに違いない。だったら、爆弾でも火炎瓶でもどんどんやったほうが徳ではないか」と、変に過激なことを考え、大学に入ってからは・・・(以下略)・・・。

まー、ほかにもこの本にはいろいろな冤罪事件が出ているわけです。まー、上のようなひどい事件はまれで、だいたいは、警察の見込み捜査がもとになっているわけです。

「前科があるから○○がやったに違いない」とかそういうパターンの決め付けなのです。いきなり別件で逮捕して、なんとなく途中で違うかもしれないなと思っても、それまで捜査したメンツとか、早く犯人を挙げろという上からの圧力などがあって、むりやり、犯人にしてしまうわけです。

警察がそんなことをしないように、ちゃんと監視をする必要があるわけです。まー、そういった意味では弁護士の先生には、人権感覚をもってやってほしいわけです。だから、上田先生のようにたぶん金にならないようなことを一生懸命やる人は貴重なのです。
最近は、一生懸命テレビに出て金を稼ぎ名を売り、なおかつ、一生懸命刑事弁護をしている弁護士に対して(多少法廷戦術に問題を感じる場合もなくはありませんが・・・)、懲戒請求を呼びかけるようなとんでもない弁護士がいるのです。世も末といわねばなりません。

ということで、是非、裁判員になろうという人には読んでほしい本です。
当然のことながら、裁判所や法務省は「日本の裁判制度は厳正に運営されている」ということだけを宣伝しているわけです(それ自体としては、おおむね正しい)。しかし、ごく稀に上のような暗黒の事件があることも忘れてはならないわけです。

どう考えても、上のような事件を法務省や裁判所が裁判員向けに宣伝することは絶対にないでしょうから、是非とも岩波書店も復刊して多くの国民が手に取れるようにしてほしいものです。